ひとひらのことのは

「きょうの発言」第10回

平成21年08月22日

「きょうの発言」第10回を転載いたします。


「現代美術が身近に」

私の趣味の一つに美術鑑賞がある。留学先のフランスで数々の名画に触れたことがきっかけだった。機会を逃すと二度と見られない作品だと聞くと、たとえ遠方であっても展覧会に足を運ばずにはいられない。昨年は「奇想の画家」と称される伊藤若冲の展覧会を京都まで見に行き、「動植綵絵」全三十幅を堪能した。

これまで数多くの美術館を訪れたが、その中で五本の指に入るくらい素晴らしいと思うのが、熊本市現代美術館である。展覧会はほぼ欠かさず見ているが、期待を裏切られたことはない。展覧会の内容はもちろん、展示の仕方も工夫がされていて、自分が繁華街のビルにいることを忘れさせてくれる。

現在開かれている、段ボールを使った作品で知られる日比野克彦さんの展覧会では、段ボールで作った「石」で「石垣」を作るという企画に誰でも参加できる。それぞれが好きな形の「石」を作っていいのだ。それが組み合さって一つの作品になる。
また、山鹿灯籠や肥後象嵌など県内の伝統工芸作家と共同製作した作品も展示されている。こういう話を聞くと、遠い存在であった現代美術が、途端に身近なものに思えてはこないだろうか。

この美術館を魅力的なものにしてきたのは、館長の南嶌宏さんの力が大きいと思う。その南嶌さんが今月末で退任されるのは残念だが、新しい館長とスタッフの皆さんが、今まで以上に素晴らしい美術館にしてくれることを期待したい。

美術館内の無料で入場できるスペースにもさまざまな作品が展示されている。それらを見て現代美術に興味を引かれたら、ぜひ展示室にも足を踏み入れていただきたい。扉の向こうには、きっと新しい世界が広がっているに違いない。

(平成20年3月11日付の熊本日日新聞夕刊より転載)


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